初日レポート3日目前半レポートと続けてきました、THE BRIDGE主催の仮想通貨スタートアップイベントTHE COIN。完結編となる3日目後半のレポートです。

3日目午後の部では、ICO(新規仮想通貨トークンを売り出すことによる資金調達)に関するさまざまな分野の勉強会が行われました。ICOに参加したことがあったり、興味がある読者の方も多いのではないでしょうか。

イベントの特性上、話の内容はICOで資金調達をする企業向けが中心。しかし、「ちゃんとしたICO」を見極めるために、投資家側にも役立つであろう学びがたくさんありました。そのあたりをグイッとまとめてお届けします。

グローバル・ブレイン 百合本 安彦

まず、何百億円単位のお金を運用しているベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインの代表取締役である百合本氏が登場。僕みたいな庶民にとっては大きすぎる額の話で「1億円って何円?」って感じなのですが、1億円は日本円にして1億円です。

日本の仮想通貨関連技術は遅れているという危機感が大きく、しっかり育てて海外と戦えるようにしなくてはいけないとコメント。出資のニュースは銘柄の値動きにも大きく影響しますので、ファンドの動向もチェックしておくと吉でしょう。

Omise Japan 宇野 雅晴

初日にはCEOの長谷川氏が登壇したOmise。3日目はビジネス・ディベロップメントマネージャーの宇野氏が、Omise Goが行ったICOについてお話されました。

2017年7月。ICOというものは、それまで「なんでもあり」の様相を呈していました。どれだけ短い期間で、どれだけ大きな資金を集めるかということだけに焦点が当たるような風潮があった中、Omise GoのICOではいくつかの制限を設けたのです。

  • 資金調達額の上限を2500万ドルに=必要な額のみ調達
  • 1人あたりの購入額も有限に=買い占めを防ぐ
  • KYC(本人確認)を必須に=法令による規制のある国での購入や、反社会的勢力のスクリーニング

特にKYC必須というのは、ICOの歴史において初めてだったかもしれないとのこと。我々は仮想通貨取引所の登録時など、KYCめんどくせ~こんなもんいいからさっさとハガキよこせや~!と思ったりしますが、法令や反社等のトラブルを回避するためにはKYCって必要なんですよね。

それは我々利用者、参加者にとってのメリットでもあります。トラブルでプロジェクトが停滞したら、せっかく投資したお金が無駄になってしまうかもしれないんですから。

上記の制限がない=信用できないプロジェクトというわけではありませんが、判断基準の1つとして覚えておくといいのではないでしょうか。

コンセンサス・ベイス 志茂 博

ブロックチェーン技術の専門企業であるコンセンサス・ベイス。代表取締役であり、経済産業省のブロックチェーン検討会で委員も務める志茂氏。

お話の内容は、まずETH(イーサリアム)のスマートコントラクトについて。現在ICOで新規トークンを発行する場合は、ERC20という規格がよく使われています。トークンごとに互換性があれば、開発側はゼロから作る手間が省けますし、ウォレットや取引所側としても取り扱いやすくなります。便利ー。

また、ERC20に存在する脆弱性などの問題を解決するための新たな規格や対策が出てきており、ICOに参加する際はどういった規格で作られたトークンなのかというのも考慮したほうがいいでしょうね。

そして話はブロックチェーンの技術者についてへ。「ブロックチェーン専門のエージェントは日本国内に1社しかないので、THE COINのようなイベントで技術者を募集する登壇者は多い。ブロックチェーンやりたい技術者さん、イベント行きましょう。売り込みましょう」と、業界全体で本当にエンジニアが足りない様子

どの業界でもそうでしょうが、有能なエンジニアは引く手あまたです。でも、仮想通貨関連の経験があるエンジニアは昔から仮想通貨やってて大金持ちなので報酬積んでも来てくれないなんてケースもあるとか。エンジニアの方、この記事読んでたら本当お願いですから仮想通貨関連の仕事受けてください。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 河合 健

大手銀行勤務から、現在はアンダーソン・毛利・友常法律事務所で仮想通貨関連の案件を多く取り扱う川合氏。ICOの法務と規制についてお話されました。全然仮想通貨とは関係ないんですが、書類の形式などの都合で世界中ほとんどの法律事務所がWindowsを使っているらしいです。僕もWindowsです。Windowsでもライターはできるし、仮想通貨もできます。バカにしないでください。

最近、日本人が行うICOでも「海外に本社があるから日本の法律は関係ないんだぴょーん」って感じのやつ、多い気がしません?でもその論理は全然通用しないんですって。発行先の国の法律、つまり我々日本に住む日本人の場合、日本の法律が関わってくると。

日本では、トークンが法的にどう分類されるかという問題があります。例えば遊園地で使える仮想通貨というものがあったとすると、遊園地内でだけ使えるトークンの場合はプリペイドカードに近いということになりますし、年間パスポートとして使える場合は、使うたびに減るわけではないので違う分類になる。

そして、仮想通貨、プリペイドカード、ポイント、有価証券など、どれに分類されるかによって適用される法律が異なるのです。複雑すぎる。

日本以外の国でも規制は進んでいて、中国なんかでは国内のICOは禁止、過去に行われた分も資金を返還することに。アメリカも証券規制がガチガチに厳しい。イギリスは慎重な様子ながら消費者向けの警告を発表したりしています。

各国の法令規制をどう捉えているか?というのも、ICOに参加する重要な基準ですね。

柳澤国際税務会計事務所 柳澤 賢仁
税務大学校研究部教育官 安河内 誠
ブロックチェーン会計士 柿澤 仁

さあついにラスト。みんな大嫌いな税金の話です。登壇は柳澤国際税務会計事務所の柳澤氏、税務大学校の安河内氏、ブロックチェーン会計士の柿澤氏、さらに先ほどから引き続き川合氏と超豪華な布陣に。ここでの話はすべて私見であるという注意があり、ディスカッションはスタート。

日本発のICOは、ホワイトペーパーなどから"海外のにおい"がするものはいくつかあった。海外を挟む構想もあったのではないかと思うが、海外に100%子会社を作ってICOしても、日本で課税されることはあるタックスヘイブン対策税制は万能ではないとのこと。払うつもりがなかった税金を払うことになれば、資金繰りが狂うってレベルじゃないですね。「○○国の企業ですので、法律的に安全です」みたいなこと謳ってるICOがあったら、超危険ということ。気をつけましょう

先ほどの規制の話でもありましたが、仮想通貨においてはどの国の法律がどのように適用されるのかは複雑極まります。「アメリカ人は、アメリカで適法だったら全世界で適法だと思う」なんて話も出てましたが、これはやっちゃダメ。日本では日本の法律が適用されて、しかもどの法律が適用されるのかもキチンと検証しなければいけないわけです。

終盤、「日本での仮想通貨に関する税率をもっと下げなければ、技術の進歩も妨げることになる」とのコメントがあったのですが、その通りだと思います。ただでさえ海外に比べて遅れを取っていると言われているわけですから、税率や規制を緩和して海外との競争力をつけることが必要ではないでしょうか。そのほうが結果的に税金もガッポガッポでしょう。

 

企業だけでなく当然、投資家にかける税率も下げるべきです。決して私利私欲で言ってるわけじゃありませんよ。僕は税金払わなきゃいけないほど、仮想通貨で儲けてないんですから。ハハハ。ハハハ……(悲しそうな顔でフェードアウト)

ということで、THE COINのレポートはこれにて完結です。CoinMagazineでは今後も、仮想通貨に関するイベントなどを独自の視点で取材していきます。取材を希望する企業、イベンター様はぜひご連絡ください。よろしくお願いします!

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